大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和地方裁判所 昭和52年(わ)465号 判決 1977年11月22日

本籍

埼玉県南埼玉郡白岡町大字小久喜一、〇六五番地

住居

右同所

会社役員

黒須徹三

昭和七年四月二八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官中村誠二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、一〇〇万円に処する。

右罰金を完納できないときは金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、埼玉県南埼玉郡白岡町大字小久喜一、〇六五番地において、黒須金物店の屋号で金物販売業を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て、現金売上の一部を除外して架空名義で預金する等の行為により、所得の一部を秘匿したうえ、

第一  昭和四八年中における実際総所得金額が四〇、八四万六、二三二円で、これに対する所得税額は二〇、七二万三、八〇〇円であるのにかかわらず、昭和四九年三月一四日、同県春日部市大字粕壁字浜川戸五、四三五番地の一所在の春日部税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が八、九三万一、六九五円でこれに対する所得税額は二、四九万六、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、前記四八年分の正規の所得税額二〇、七二万三、八〇〇円との差額一八、二二万七、五〇〇円を免れ、

第二  昭和四九年中における実際総所得金額が四一、九五万一、七八五円で、これに対する所得税額は一九、九七万六、一〇〇円であるのにかかわらず、昭和五〇年三月一四日、前記春日部税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が五、九八万三、〇六四円で、これに対する所得税額は九七万五、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、前記四九年分の正規の所得税額一九、九七万六、一〇〇円との差額一九、〇〇万一、一〇〇円を免れ、

第三  昭和五〇年中における実際総所得金額が四三、一九万五、三七三円で、これに対する所得税額は二〇、二〇万五、六〇〇円であるのにかかわらず、昭和五一年三月一三日、前記春日部税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一四、八三万五、二二一円で、これに対する所得税額は四、二三万七、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、前記五〇年分の正規の所得税額二〇、二〇万五、六〇〇円との差額一五、九六万八、二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書一〇通

一、被告人作成の答申書三通

一、黒須和枝の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官作成の調査書三通

一、大蔵事務官作成の現金預金有価証券等確認書

一、大蔵事務官作成の商品有高確認書

一、次の者に対する大蔵事務官の質問てん末書

黒須和枝(三通)、村松康平、大野正司

一、次の者ら作成の各答申書

長谷川寛(二通)、九ノ里弘道、大野正司(二通)、荒井稔雄、網代桂治、川口正次郎、加藤栄、吉田仁右衛門、宮下忠治、服部勝正、森田誠一、本多福寿、酒巻久子、島田溜一、後藤湊(二通)、小林春男(二通)、折原秀雄、内林利幸

一、次の者ら作成の各供述書

菅原守郎、盛潤、稲橋実、小林栄司

一、大蔵事務官藤沢範男外三名作成の武蔵野銀行久喜支店調査関係書類と題する書面

一、大蔵事務官坂本英雄外三名作成の埼玉銀行白岡支店調査関係書類と題する書面

一、大蔵事務官平岡信之外二名作成の東武証券久喜営業所調査関係書類と題する書面

一、大蔵事務官河内良成外三名作成の日興証券日本橋丸善支店調査関係書類と題する書面

一、大蔵事務官宮崎光外一名作成の差押てん末書

一、大蔵事務官白津吉英外一名作成の差押てん末書

一、大蔵事務官金田茂作成の領置てん末書

一、大蔵事務官作成の簿外売上明細表等別表目録

一、大蔵事務官笹井繁男作成の証明書二通

判示第一、第二の事実につき

一、金子昭夫作成の供述書

判示第一、第三の事実につき

一、沢田繁雄、柿沢久夫作成の各答申書

判示第一の事実につき

一、篠原正一作成の答申書

一、目羅嘉之作成の供述書

一、大蔵事務官作成の(昭和四八年度)脱税額計算書、修正損益計算書、調査所得の説明書及び査察更正決議書

判示第二、第三の事実につき

一、巻島義夫、近藤治伸、宮地佑典作成の各答申書

一、今井潔、鴨田武作成の各供述書

一、大蔵事務官高波富治外二名作成の日本勧業角丸証券債権営業部調査関係書類と題する書面

一、大蔵事務官河内良成外一名作成の日興証券大宮店調査関係書類と題する書面

判示第二の事実につき

一、次の者ら作成の各答申書

市川与八、佐藤真市、関口政司、青山重雄、市川金次、近藤信雄、渡辺昭之、鈴木勝男、久保田四郎

一、大蔵事務官金子一男外一名作成の武蔵野銀行熊谷店調査関係書類と題する書面

一、大蔵事務官作成の(昭和四九年度)脱税額計算書、修正損益計算書、調査所得の説明書及び査察更正決議書

判示第三の事実につき

一、次の者ら作成の各答申書

佐藤孝太郎、塚越三一郎、山崎清、小山一雄、池沢清、竹内英男、池田秀雄

一、大蔵事務官向山宏外二名作成の埼玉信用金庫白岡支店調査関係書類と題する書面

一、大蔵事務官高波富治外二名作成の日本勧業角丸証券新小岩支店調査関係書類と題する各書面

一、大蔵事務官荒井宏作成の証明書

一、大蔵事務官作成の(昭和五〇年度)脱税額計算書、修正損益計算書、調査所得の説明書及び査察更正決議書

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、所得税法二三八条一項に該当するので、いずれも情状により懲役刑と罰金刑を併科することとするが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一、一〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文により被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 北野俊光)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例